五感で楽しむ蜜ろうそく作り

日は短くなり、ストーブを点ける回数が日に日に増えてきました。外の景色が旺盛だった夏の頃に比べて、今は畑も花壇も冬支度を終え、木々の葉も舞い落ち、外の景色が簡素にすっきりするこの季節、人の内面では思考も明瞭になり様々な気付きや閃きに繋がります。その気付きや閃きは成長の糧となり輝きをもたらしてくれるため、この季節に人は、物理的にも精神的にも光と温もりを求めます。

そんな季節になると、園では蝋燭作りを行います。朝から蜜蝋が入った鍋を火にかけて蜜蝋チップを溶かし、登園時間の頃には保育室は仄かに甘い香りと温かさに満たされます。 園児達は歌とハミングの静かな響きに耳を傾け、トロリと溶けた蜜蝋液に蝋燭の芯をゆっくりと浸します。その動作は勢いではなく、ミツバチさんが集めた貴重な蜜蝋を少しづつ分けてもらって作る大切な蝋燭のための、誰かを思いやる慎重な動作です。貴重な蜜蝋が飛び散らないように、ヤケドをしないように、厳かな空間に身を置き、集中し真剣に慎重に蝋燭を浸して乾かし、また浸してを繰り返します。1日では終わらせずに毎日繰り返し作業を行い、自分の蝋燭を少しづつ太くしていきます。

作り途中の蝋燭を仕舞う度に、殆どの子が自分が作っている蝋燭をそっと握ったり、鼻を近づけて香りを嗅いだりして、その温かさと甘い香りを楽しんでいます。

毎日の繰り返しの動作が同じでも、蝋燭は少しづつ太くなり小さな変化の発見があります。どの子も自分で作り上げる蝋燭をとても誇らしげに大切に扱っています。そして約2週間かけて蜜蝋燭が完成します。

園児達は感覚を使って、変容していく成長を体験し、芸術活動を通して成功体験を積み重ねているのです。毎年、集中し真剣な子ども達の姿に尊さを感じます。

完成した蝋燭はクリスマス前のアドベントという祝祭で、林檎を土台とした林檎蝋燭として用いて祝祭後に家庭に持ち帰ります。

林檎蝋燭を体験し終えると、商業的ではないクリスマスの時期の光と温もりを経験出来るアドベントの4週間が始まります。

記事: こどもの園 大石

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