いずみの学校は、こどもの園から12年生まで15年一貫教育の学校です。小中等部から高等部までは一つの校舎に学びます。
その校舎の3階、高等専修学校のフロアには、低学年の子どもたちは立ち入ることができません。
ある日、その3階の廊下を歩いていると ―
― 目にとまったのは、「お悩み相談BOX」と書かれたカラフルな箱。
どうやら、高等部の文藝同好会のみんなが設置したもののようです。
文藝同好会といえば、10月のいずみ祭で発表したオリジナル小説『浪の境界』。
文庫本サイズ・全118ページの大作を、自分たちで書き上げ、表紙デザインからポストカード、PV(映像)制作まで手がけました。
一つの物語を3名で書き継ぐスタイルは独創的で、まさに「みんなで物語を紡ぐ」作品。
豊浦町を舞台にした、実際の場所がたくさん登場する異世界ご当地SFとして、保護者の中でも話題になり、再販もされました。
しかし取材にうかがうと、返ってきたのは「もう小説のことはだいぶ前のことだから忘れちゃった!」という声。
どうやら今は、新しい活動に夢中のようです。
というわけで、今回は文藝同好会の“現在(いま)”に迫ります。
文藝同好会の歩み
文藝同好会は、昨年度(2024年4月)に誕生しました。
現在は9年生から12年生までの女子7名と、台湾からの留学生1名が所属しています。
発足当初は「高等部新聞の壁を彩る」ことを目標に、月1回、A3数枚の壁新聞を制作。
保護者向けにデジタル版を配信していました。
今年度は、“より文藝的な活動を”という思いから、小説制作に挑戦。
その成果が、いずみ祭で発表された『浪の境界』です。
そして現在は、ふたたび「壁新聞」の活動が活発に。
タイトルは「絵と文が咲く(えもさく)新聞」。
メンバーそれぞれが、自分の「好き」を自由に表現しています。
「歴史」「百人一首」「アニメ」「イラスト」「恋愛」「音楽」など、テーマはバラバラ。
でも、それぞれの個性が混ざり合ってひとつの新聞になるのが面白いんです。

恋愛企画からお悩み相談まで!
新しい壁新聞の目玉は、「告白実行委員会」と「お悩み相談BOX」。
今まではあんまり高等部生からの反応がなかったので、自分たちの好きと同時に彼らにも寄り添う企画を作りたい、と新企画を提案
「告白実行委員会」では、恋愛にまつわる雑学やインタビューを実施。
「おすすめのデートスポット」をテーマにアンケートを実施し、なんと高等部の約50人に聞き込み!
ダントツの人気は「水族館」だったそうです!。
取材に応じてくれた部員たちは、「アンケートが超楽しかった!」「至福でした!」と笑顔で話してくれました。
一方、「お悩み相談BOX」には、ここ2週間で9件の質問が集まりました。
内容は、「歴史の人物の覚え方」「男子へのプレゼントの選び方」「食べすぎをやめたい」「彼女がほしい」など、多岐にわたります。
ペンネームで寄せられた悩みに、同好会のメンバーがみんなで答えを考えます。
「最初は2人で始めた企画だったんですけど、みんながノリノリになって、全員で答えることになっちゃいました(笑)」

放課後の小さな創作時間
活動は週2回、放課後に行われています。
作業はすべて学校で完結。
約1か月かけてA3用紙5枚分の新聞を完成させるのだそうです。
「文章を書いてて、言葉がパッと浮かぶ瞬間がすごく楽しい」
「イラストを描くのが楽しくて、『今日は文藝の部活あるから学校行こう』って思える」
「みんなでゆるく楽しいことしてる時間が好き」
「大好きなアニメのイラスト書くのが楽しすぎる」
「台湾の学校には放課後活動がなかったので、ここでの活動がとても楽しい」
取材の日、すでに次号の新聞は完成間近。
笑い声とともに、A3用紙いっぱいに広がる文字と絵が、彼らの世界を描き出していました。

小説『浪の境界』より
目が覚めると
故国とは似ても似つかない風景が広がっていた。
これは「とようら」という街での物語――
故国の失われた緑を取り戻すべく帰るすべを探る青年たち。
列車、トンネル、海、森、撮り鉄。
海より現れし朧げなる者たちよ、
太陽が真西に沈むとき、内なる光が汝らを未来へと導くだろう。
🔗 PVはこちら
YouTube「浪の境界」PV
作品づくりも、壁新聞も、そしてお悩み相談も――。
ゆる〜く、心動くままに、楽しんで。
まさに エモ咲くタイムを満喫している部員たち。
どれも「言葉」を通して人とつながる、文藝同好会らしい活動でした。
次はどんなテーマが紙面を彩るのか、今から楽しみです。

記事: Yoshimi Bando













