教育移住のリアル Vol.2 |森山真実子さん(北海道洞爺湖町)【前編】

海と山、湖、そして火山に囲まれた北海道・豊浦町。
ここにある北海道シュタイナー学園 いずみの学校には、シュタイナー教育と、子どもが豊かに育つ環境を求め、全国各地からご家族で移住してくる方がいます。

なぜ、住む場所やライフスタイルを変えてまで、この教育を選んだのでしょうか。

この連載では、実際に教育移住を経験されたご家族にお話を伺い、移住を決めた理由、子どもの変化、そして北海道で始まった新しい暮らしをご紹介します。

第2回は、東京から北海道洞爺湖町へ移住して4ヶ月の森山真実子さんご家族です。
前編では、移住を決めるまでの経緯と、子どもたちに起きた変化についてお伺いします。


「子どもたちを、ひとつの価値観の中で育てたい」

東京での試行錯誤を経て選んだ、北海道でのシュタイナー教育

■ 北海道への憧れから始まった、教育移住への道

小学2年生と4年生のお子さんとともに移住してきた森山真実子さん。

子どもが幼児期にシュタイナー教育を検討し始めた頃から、北海道に惹かれる気持ちはあったそうです。

「でも当時は、もし来るとしたら、私も仕事を辞めて母子だけの移住になりそうで。小さい子どもたちとパパが離れて暮らすのは、やっぱり嫌だったんですよね」

そう考え、当時は現実的な選択として、まず東京のシュタイナー学校に通う道を選びました。


「東京での二重生活。異なる環境の中で見えてきた課題」

しかし、そこから姉弟それぞれが異なる学校環境で過ごす、数年間の試行錯誤の日々が始まります。

下の子をシュタイナー園に入れるために転居し、そのまま同じ系列の小学校へ進学。一方で、上の子は同じタイミングでシュタイナー学校への編入がかないませんでした。

そのため上の子は、公立小学校へ通いながら、土曜日には片道1時間半かけて以前住んでいた地域のシュタイナー土曜クラスへ通う生活を続けました。

「最初に通っていた公立小学校はICT教育の推進校で、校庭でドローンを飛ばすような環境でした。家ではシュタイナー教育を大切にした暮らしをしていたので、娘は学校と家庭、それぞれ異なる価値観の中で過ごす状態だったんです」

「友達と遊びたいという時も、異なる環境で過ごすお友達とも家庭の方針を大切にしながら楽しく遊べるよう、うちに呼んでお菓子作りをしたり、みんなで夢中になれる過ごし方を工夫していました。」

しかし3年生になる頃には、友達同士で外へ遊びに行くことも増え、習い事をしている子どもたちはスマートフォンを持ち始めます。

「このまま二つの環境を行き来しながら過ごすのは難しいな、と感じるようになりました」


「 姉弟を同じ学びの場へ。家族で決めた北海道移住」

もともと物語やファンタジーの世界が好きだった上の子は、シュタイナー教育そのものを楽しんでいました。

「娘にとっては、二つの価値観の間で過ごすより、一つの価値観の中で安心して生活できる方が合っていると思ったんです」

その思いが、北海道への移住を決断する大きなきっかけになりました。

「年齢も上がってきたし、今なら多少パパと過ごせない時間があっても、違和感なく過ごせるだろうと思えたことも、大きかったですね」

そして何より、「姉弟を同じ学びの場に通わせたい」という願いがありました。

「行くって決めたら、不思議と自然にみんなの気持ちがそちらに向いていったんです」

夫は東京で仕事を続けながら、現在は月1回ほど北海道に通っています。森山さん自身もフルリモートで仕事を続けながら、家族で新しい暮らしを築いています。


「子どもが変わったのではなく、世界の見え方が変わりました」

暮らしの中で育つ、「仕事」と「命」のつながり

移住して4ヶ月。子どもたちの変化について尋ねると、下の子はシュタイナー教育の延長線上にある環境なので、学校が変わっても戸惑いはほとんどなかったそうです。

また、上の子は以前から、シュタイナー学校に通う弟をうらやましく思っており、
「自分もあんな幼稚園・学校に行きたかった」と話していたほど。そんな念願の環境で、毎日楽しく学校生活を送っているそうです。

森山さんは、「目に見えて大きく変わったということはないんです」と前置きしながらも、子どもたちが触れる世界は確実に変わったと話します。

「以前は大人の職業にしても、『○○ちゃんのお父さんは建築家なんだって』と聞いても、実際に仕事をしている姿を見る機会はありませんでした。子どもにとっては聞いた話でしかなかったんです」

「でもこちらでは、牧場で牛を育てている様子を見に行ったり、畑を耕す人の姿を見たり、先生が動物を連れてきて草を食べさせたり、子どもと一緒に歩いたりと、暮らしと仕事がすぐそばにあります」

暮らしの営みと、自分たちが食べているものとのつながりも、日常の中で自然に感じられるようになったといいます。

「以前も家で畑をやったりはしていましたが、こちらではもっとダイナミックに感じられるようになった気がします」


「便利さ」ではなく「豊かさ」を選ぶ暮らし

北海道で見つけた、想像以上の豊かな日常

森山さんは、都会からの移住ですが、暮らしの不便さはほとんど感じていないと話します。

「結局、何を求めて移住するかだと思うんです。夜中まで開いているお店、便利さを求めるなら東京の方がいいかもしれません。でも、私たちはそれを求めて来たわけではないので」

むしろ、この地域ならではの豊かさを日々感じているそうです。

「この辺りはバイオダイナミック農法だけではなく、無農薬や低農薬に取り組んでいる生産者さんが多くて、道の駅には本当に新鮮でおいしい野菜が並ぶんです。トマトが山盛りで100円台や200円くらいで買えることもあります」

便利さは東京に及ばなくても、それ以上の豊かさがあるといいます。

「むしろ豊かさしか感じていなくて、不便だと思ったことはほとんどないですね」


後編では、移住準備で最も苦労したという住まい探しの実際、北海道ならではの自然環境、暮らしの中で感じた変化、そして学校を中心とした保護者コミュニティとの関わりについてお届けします。

▶︎後編へ続く

※個人の体験・感想であり、学校としての見解ではありません

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